借金の時効は何年か|5年と10年の違い、起算点と更新の仕組み

借金の返済を求める権利は、一定期間が過ぎると時効で消滅します。2020年4月1日以降に生じた債権は、民法第166条第1項により「権利を行使することができることを知った時から5年」または「権利を行使することができる時から10年」の早い方です。貸金業者や銀行からの借入は返済期日が契約で定まっているため、実務上は5年で判断されます。ただし期間が過ぎても自動的に消えるわけではなく、民法第145条にもとづく「援用」という意思表示が必要です。また、1円でも返済したり支払いを約束したりすると期間は振り出しに戻ります(同法第152条)。本記事では起算点の数え方、振り出しに戻る行為、援用の手順を順に整理します。

  1. 借金の時効は何年か|まず押さえる3つの結論
    1. 結論1:条文は5年と10年の二本立て
    2. 結論2:期間が過ぎても自動的には消えない
    3. 結論3:途中の出来事で期間はリセットされる
  2. 時効の起算点はいつからか|数え始める日で結論が変わる
    1. 「最後に返済した日」は起算点ではない
    2. 期限の利益喪失日が基準になる場合
    3. 期限の利益を喪失していない場合
    4. 自分で起算点を確認する手がかり
  3. 借金の種類別にみた時効期間
    1. 個人間の借金は改正の影響を受けやすい
    2. 税金・社会保険料には援用の仕組みがない
    3. 判決が確定している場合は10年
  4. 時効の「完成猶予」と「更新」|2020年改正で変わったこと
    1. 裁判上の請求等(第147条)
    2. 強制執行等(第148条)
    3. 催告(第150条)と協議の合意(第151条)
    4. 承認(第152条)
  5. 時効が振り出しに戻る行為|更新されてしまう経路
    1. 電話での一言が最も多い経路
    2. 「少額なら大丈夫」という誤解
    3. 身に覚えのない通知への折り返し
  6. 時効の援用の進め方と、通らなかったときに起きること
    1. 一般的な手順
    2. 自分で行う場合と、専門家に依頼する場合
    3. 期間が足りていなかった場合
    4. 判決や支払督促がすでにあった場合
    5. 残高が増えている/訴訟や差押えに進む
    6. 債権回収会社(サービサー)から通知が来たとき
  7. 時効の援用と債務整理はどちらを選ぶか
    1. 援用が選択肢になる状況
    2. 債務整理のほうが現実的な状況
    3. 信用情報の扱い
  8. 違法業者への注意と、無料で相談できる窓口
    1. 注意すべき勧誘の特徴
    2. 相談窓口
  9. よくある質問
  10. まとめ

借金の時効は何年か|まず押さえる3つの結論

「何年か」の答えは、いつ生じた債権か、誰に対する債務か、途中で何があったかで変わります。出発点は次の3点です。

結論1:条文は5年と10年の二本立て

民法第166条第1項は、債権が時効で消滅する場合を次のように定めます。

一 債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。

二 権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

前者を主観的起算点から5年、後者を客観的起算点から10年と呼び、早く到来した方で時効が完成します。カードローンやキャッシングのように契約書で返済期日が定まっている債務では、債権者は最初からいつ請求できるかを知っているため両方の起算点が一致し、5年が先に到来します。この種の借金が「5年」と説明されるのは、この理由です。

結論2:期間が過ぎても自動的には消えない

民法第145条は、消滅時効について「当事者(保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む。)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない」と定めます。債務者側が「時効が完成しているので支払いません」と主張すること(援用)が必要で、援用せずに請求に応じて支払えば、その支払いは有効なものとして扱われます。条文上、保証人や物上保証人も援用できます。

結論3:途中の出来事で期間はリセットされる

債権者が裁判を起こしたり、債務者が支払いを約束したりすると、進行中の期間が止まったり、ゼロから数え直しになったりします。実務で最も多いのは債務者側の行為によるリセットです。

時効の起算点はいつからか|数え始める日で結論が変わる

期間の長さと同じくらい重要なのが、どの日から数え始めるかです。1年の読み違いで結論は正反対になります。

「最後に返済した日」は起算点ではない

最後の返済日は手がかりですが、起算点そのものではありません。最後の返済の後、約定どおりの次回返済期日が到来し、それを支払わなかった時点から進行が始まるのが基本です。

期限の利益喪失日が基準になる場合

分割払いの契約には通常、一定期間の滞納で残額を一括請求できるという期限の利益喪失条項があります。これが発動すると、残債務の全額を一度に請求できる状態になり、その日が残債務全体の起算点になります。カードローンや信販会社の契約では、2か月から3か月程度の滞納で喪失する定めが一般的です。

同じ「5年前に返済をやめた」というケースでも、期限の利益喪失の手続きが取られていたかどうかで判断は変わります。契約書と取引履歴を見ずに自己判断するのが難しいのは、この部分です。

期限の利益を喪失していない場合

喪失していないときは、各回の支払期日ごとに別々に時効が進みます。6年前の回は完成している一方、2年前の回は完成していないという状態もあり得ます。借金全体が時効になったとは言えず、一部についてのみ援用が成立する形です。

自分で起算点を確認する手がかり

  • 契約書・会員規約(期限の利益喪失条項の内容)
  • 取引履歴(債権者に開示請求できます)
  • 信用情報機関の開示報告書(CIC・JICC・KSC)
  • 届いた督促状や債権譲渡通知(「最終弁済日」「最終取引日」の記載)

これらの日付が食い違うことは珍しくありません。どの日を起算点とすべきかは法的な評価を含む判断になるため、一般的な扱いの説明はここまでにとどめます。個別の事案の結論は弁護士にご確認ください。

借金の種類別にみた時効期間

債務の種類で適用条文も期間も変わります。また、2020年4月1日に施行された改正民法(民法の一部を改正する法律・平成29年法律第44号)の前後で扱いが異なります。同法の経過措置により、施行日前に生じた債権の消滅時効の期間については、なお従前の例によるものとされています。

債務の種類2020年4月1日以降に生じた債権2020年3月31日までに生じた債権主な根拠援用が必要か
消費者金融・信販会社からの借入5年5年(商事債権として扱われてきた)民法第166条第1項/旧商法第522条(現在は削除)必要
銀行等のカードローン5年5年とされることが多い同上必要
クレジットカードのショッピング(立替金)5年5年とされることが多い同上必要
個人間の貸し借り5年(知った時から)10年民法第166条第1項/旧民法第167条第1項必要
家賃・地代5年5年民法第166条第1項/旧民法第169条必要
携帯電話・通信料金5年5年とされることが多い民法第166条第1項必要
国税(所得税・消費税など)法定納期限の翌日から5年同じ国税通則法第72条不要
地方税(住民税・固定資産税など)法定納期限の翌日から5年同じ地方税法第18条不要
国民健康保険の保険料2年2年国民健康保険法第110条—
判決などで確定した債権確定から10年確定から10年民法第169条第1項必要

個人間の借金は改正の影響を受けやすい

友人や親族からの借入は、改正前が10年(旧民法第167条第1項)、改正後は原則5年です。2020年4月1日をまたぐ借入では、どちらが適用されるかで5年の差が出ます。借用書の作成日や金銭を交付した日が分かれ目になります。

税金・社会保険料には援用の仕組みがない

国税通則法第72条第2項は「国税の徴収権の時効については、その援用を要せず、また、その利益を放棄することができないものとする」と定め、地方税法第18条第2項も同じ構造です。期間が過ぎれば援用なしに消滅する点は債務者に有利ですが、これらには滞納処分という回収手段があり、放置して自然に消えるのを待つ発想が成り立つ領域ではありません。

国民健康保険の保険料は国民健康保険法第110条第1項により2年で、同条第2項により徴収の告知または督促が時効の更新の効力を生ずるとされています。減免や分納の取り扱いはお住まいの自治体で異なりますので、窓口にご相談ください。

判決が確定している場合は10年

民法第169条第1項は「確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする」と定めます。5年で時効になるはずだった貸金債権も、勝訴判決が確定すればそこから10年です。仮執行宣言付支払督促や裁判上の和解も「確定判決と同一の効力を有するもの」に含まれ、訴状や支払督促を放置した場合はこの10年が始まります。

時効の「完成猶予」と「更新」|2020年改正で変わったこと

時効の説明が分かりにくい原因のひとつは、用語が改正で変わったことです。古い記事と新しい記事で言葉が違うため、同じことを指しているのか判断しづらくなっています。

2020年3月31日までの用語2020年4月1日からの用語期間の扱い
時効の中断時効の更新それまで経過した期間が消え、ゼロから数え直しになる
時効の停止時効の完成猶予それまで経過した期間は維持され、一定期間は時効が完成しない

「中断」は日常語では一時的に止まる意味に受け取られやすく、実際の効果(リセット)と合っていませんでした。改正で、リセットは「更新」、一時停止は「完成猶予」と呼び分けられています。

裁判上の請求等(第147条)

民法第147条第1項は、裁判上の請求、支払督促、訴訟上の和解や民事調停、破産手続参加等があった場合、その事由が終了するまで時効は完成しないと定めます。権利が確定せずに終了した場合は、終了の時から6か月を経過するまで完成しません。同条第2項により、確定判決等で権利が確定したときは事由の終了時から新たに進行を始めます。訴訟の間は完成猶予、判決確定で更新という二段構えで、その期間は第169条により10年です。

強制執行等(第148条)

同法第148条第1項は、強制執行、担保権の実行、財産開示手続や第三者からの情報取得手続があった場合、その事由が終了するまで時効は完成しないと定め、第2項で事由の終了時から新たに進行を始めるとします。給与の差押えを受けるとこの条文が働きます。差押えの際に勤務先へ何が届くのかは、給与差押えは会社に何が届くのかで整理しています。

催告(第150条)と協議の合意(第151条)

第150条第1項は「催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない」と定めます。催告とは裁判外で支払いを求める行為で、内容証明郵便による請求が典型です。ただし第2項により、猶予期間中の再度の催告に重ねての効力はなく、催告を繰り返して無限に先延ばしすることはできません。

第151条は改正で新設された規定です。協議を行う旨の合意が書面でされたときは、合意から1年、定めた協議期間(1年未満)の経過、または協議の続行を拒絶する通知から6か月のうち、いずれか早い時まで時効は完成しません。合意を重ねても、本来時効が完成すべき時から通算して5年を超えることはできません(同条第2項)。

承認(第152条)

実務上、債務者が最も意識すべき条文です。「時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める」と定められ、承認があればそれまでの期間はすべて消えます。承認の方法に特別の形式は求められていないため、口頭でも成立し得ます。

時効が振り出しに戻る行為|更新されてしまう経路

「あと数か月で5年だったのに、電話に出て答えてしまった」という相談は少なくありません。振り出しに戻る経路は、1つか2つを避ければ足りるという数ではありません。

行為法的な位置づけ時効への影響起こりやすい場面
1円でも返済する権利の承認(第152条)更新(ゼロから数え直し)「とりあえず少しだけ」と入金する
返済の猶予を申し入れる権利の承認更新「来月まで待ってほしい」と伝える
支払いの意思を口頭で伝える承認と評価される余地更新の可能性督促の電話で「払います」と答える
残高確認書・債務承認書に署名する権利の承認更新届いた書面に署名押印して返送する
分割払いの和解に応じる権利の承認更新回収担当者の提案に合意する
債務の一部を認める書面を出す権利の承認更新「元金だけなら払う」と書面で回答する
訴訟を起こされ判決が確定する裁判上の請求(第147条)完成猶予のうえ更新、期間は10年(第169条)訴状を放置して欠席判決になる
支払督促に異議を出さない第147条・第169条同上2週間の異議申立期間を過ぎる
給与や預金を差し押さえられる強制執行(第148条)完成猶予のうえ更新判決後に差押えを受ける
書面で協議の合意をする第151条完成猶予(通算5年まで)和解交渉の合意書を交わす

電話での一言が最も多い経路

督促の電話では、相手は支払う意思の有無を確認する質問をします。「いつなら払えますか」に、その場をしのぐつもりで答える形が典型です。「払えません」は承認にあたりませんが、「来月なら少し払えます」は承認と評価される余地があります。線引きが微妙なため、時効の可能性を考えている段階では、電話で金額や時期の話をしない対応が現実的です。

「少額なら大丈夫」という誤解

1,000円の入金でも、法的な評価は権利の承認です。金額の大小で結論が変わる仕組みにはなっておらず、残高確認の意味で少額を入金すると、それまでの数年間がすべてリセットされます。

身に覚えのない通知への折り返し

長く忘れていた債務について、ある日「債権譲受けのご通知」や「法的手続き移行予告」が届くことがあります。驚いて電話をかけ、記載内容を認める発言をすると承認にあたる可能性があります。まず書面を保管し、記載された最終取引日と現在との期間を確認するのが先です。差押えや訴訟に進めば勤務先に知られる可能性も出てきます。借金が会社に知られる経路とその防ぎ方は、借金が会社にバレる6つの経路と、それぞれ防げるかどうかで経路ごとに整理しています。

時効の援用の進め方と、通らなかったときに起きること

時効期間が過ぎている可能性が高いと判断できたら、援用の意思表示を行います。後日の争いに備え、証拠が残る方法を選ぶのが通例です。援用通知書の書き方と送付前の確認事項は、時効の援用とは|期間が過ぎただけでは借金は消えないでも詳しく整理しています。

一般的な手順

  1. 取引履歴の開示を請求し、最終取引日と期限の利益喪失日を確認する
  2. 信用情報機関(CIC・JICC・KSC)に開示請求し、登録内容と照合する
  3. 裁判や支払督促の有無を確認する(判決があれば10年になります)
  4. 援用通知書を作成する
  5. 内容証明郵便(配達証明付き)で債権者に送付する
  6. 債権者からの回答を保管する

3番目は見落としやすい部分です。過去に訴訟を起こされていれば援用通知を送っても意味がなく、身に覚えがなくても転居を繰り返していた期間に書類が届いていた可能性は残ります。

通知書に決まった様式はありませんが、債権者名、契約を特定する情報、時効期間が経過している旨、援用する意思表示、以後の請求に応じない旨、日付・氏名・住所を記載するのが一般的です。注意したいのは、「分割なら支払える」といった記載を混ぜないことです。援用の通知と支払いの申し出が同じ書面にあると、承認と評価される余地が生じます。

自分で行う場合と、専門家に依頼する場合

項目自分で行う場合弁護士・司法書士に依頼する場合
主な費用内容証明郵便の郵便料金(1通1,000円〜2,000円程度。郵便料金の改定で変わります)、信用情報の開示手数料(数百円〜1,500円程度。機関と請求方法で異なります)債権者1社あたり2万円〜5万円程度を目安として掲げる事務所が多く見られます。相談料が無料の事務所もあります
期間の目安書類の準備に1週間〜1か月、通知の到達から回答まで2週間〜1か月程度依頼から通知発送まで1週間〜1か月、回答までは自分で行う場合と同程度
起算点の判断自分で契約書と履歴を読む必要があります契約条項と取引履歴から判断してもらえます
判決の有無の調査自分で確認する必要があります調査を依頼できます
通らなかった場合改めて対応を考える必要がありますそのまま債務整理の検討に移れる場合があります
債権者からの連絡自分に直接届きます受任通知後は代理人宛てになります

費用は事務所ごとに設定が異なり、債権者の数や事案の内容でも変わります。着手金・報酬金・実費の内訳と、援用が認められなかった場合の費用の扱いを、契約前に書面で確認しておくことが実際的です。

期間が足りていなかった場合

起算点の読み違いで、実際には完成していなかったケースです。通知によって債権者に現住所が伝わるため、それまで連絡が取れなかった債権者が改めて請求や法的手続きを検討する契機になり得ます。起算点が微妙な事案では、通知を出す前に判断を固める必要があります。

判決や支払督促がすでにあった場合

判決が確定していれば第169条により10年、確定後に差押えがあれば第148条により更新されているため、援用が成立する時期はかなり先になります。支払督促については、裁判所の説明によれば、債務者は受け取ってから2週間以内に督促異議の申立てをすることができ、異議がないまま期間が過ぎると債権者は仮執行宣言を申し立てられ、仮執行宣言付支払督促が確定します。

残高が増えている/訴訟や差押えに進む

滞納期間中、遅延損害金が加算され続けています。元金が時効で消えなかった場合、請求額は当初の借入額を相当に上回っていることがあります。援用が通らず話し合いもつかなければ、債権者は訴訟や支払督促に進み、判決後は給与や預金の差押えが可能になります。

債権回収会社(サービサー)から通知が来たとき

元の貸金業者ではなく債権回収会社の名前で通知が届くことがあります。債権管理回収業に関する特別措置法にもとづく許可を受けた会社が、債権を譲り受けて回収する仕組みです。押さえておく点は次の4つです。

  • 債権が譲渡されても、時効期間と起算点は元の債権のまま引き継がれます。譲渡で5年が延びることはありません
  • 通知書の「最終入金日」「最終取引日」は起算点を推定する手がかりになります
  • 分割払いの提案に合意すると承認となり、更新されます
  • 許可業者かどうかは、法務省が公表する債権管理回収業の許可業者一覧で確認できます

時効の援用と債務整理はどちらを選ぶか

援用は、条件がそろえば負担の小さい選択肢です。そろわない場合は別の手段を検討することになります。

項目時効の援用任意整理個人再生自己破産
前提となる状況最終取引から5年以上経過し、判決や差押えがない継続的な収入があり、3年〜5年で元金を返済できる継続的な収入があり、減額後の額を原則3年で返済できる返済の見込みが立たない
裁判所の関与なしなし(債権者との直接交渉)ありあり
対象の選択時効が完成している債権のみ債権者を選べる原則すべての債権者原則すべての債権者
債務の扱い援用が成立した債権は消滅将来利息の減免が中心法定の基準に従って減額免責されれば支払義務がなくなる
期間の目安1か月〜3か月程度3か月〜6か月で和解、その後3年〜5年返済申立てから6か月〜1年程度同時廃止なら3か月〜6か月、管財事件なら6か月〜1年程度
費用の傾向自分で行えば実費のみ、依頼すれば1社あたり2万円〜5万円程度1社あたり数万円程度数十万円程度に加え裁判所の手続費用数十万円程度に加え裁判所の手続費用
住宅・自動車影響しません対象から外せば影響しません住宅資金特別条項の利用余地があります原則処分の対象になります

費用と期間は、事案の内容、債権者の数、裁判所の運用によって変わります。表の数値は幅のある目安であり、個別の見積りは相談先で確認してください。

援用が選択肢になる状況

  • 最後の返済または最後の取引から5年以上経過している
  • その間、支払いを約束したり一部入金したりしていない
  • 訴訟を起こされた記憶がなく、判決や支払督促も届いていない
  • 給与や預金の差押えを受けたことがない
  • 債務が貸金業者、銀行、信販会社に対するものである(税金や社会保険料には援用の仕組みがありません)

債務整理のほうが現実的な状況

  • 最終取引から5年経っていない、または直近で一部返済や支払いの約束をしている
  • すでに判決や支払督促が確定している
  • 時効が完成している債権と、していない債権が混在している
  • 複数の債権者がおり、全体の整理が必要である

混在型では、完成している分を援用し、残りを任意整理する組み合わせも実務上あり得ます。どれが適切かは債務の内訳によるため、一般的な説明にとどめます。任意整理を選ぶ場合の費用や信用情報への影響は、任意整理のデメリットは何か|費用・期間・信用情報への影響で整理しています。

信用情報の扱い

援用の後に信用情報機関の登録がどう扱われるかは、機関ごとの登録基準と債権者の報告内容によって異なります。援用が成立すれば自動的に記録が消える仕組みではありません。登録内容はCIC・JICC・KSCに本人開示を請求して確認でき、記載に誤りがあると考える場合は各機関の訂正・調査の手続きを利用します。

違法業者への注意と、無料で相談できる窓口

時効や債務整理を調べている段階は、違法な業者の勧誘が届きやすい時期でもあります。

注意すべき勧誘の特徴

  • 「時効になっているので無料で消せます」と断定し、先に手数料を求める
  • 貸金業の登録がないまま貸付けを行う(金融庁の登録貸金業者情報検索サービスで確認できます)
  • 法定上限を大きく超える利息や、短期間での高額な返済を求める
  • 事務所の所在地、代表者名、登録番号が確認できない
  • 「債務整理の費用を他社から借りて用意する」と勧める

借入先を探している場合は、金融庁の登録貸金業者情報検索サービスで登録の有無を確認してください。登録のない業者からの借入は、生活の立て直しをかえって難しくします。

相談窓口

窓口連絡先相談できる内容
消費者ホットライン188消費生活全般、違法な取立てや勧誘のトラブル
法テラス(日本司法支援センター)0570-078374法制度の情報提供、条件を満たす場合の無料法律相談と費用立替
日本貸金業協会 貸金業相談・紛争解決センター0570-051-051貸金業者との間のトラブル、多重債務の相談
警察相談専用電話#9110違法な取立て、脅迫的な言動など
各自治体の消費生活センター自治体により異なります消費生活全般の相談

相談の内容や受付体制、無料法律相談の要件は窓口により異なります。法テラスの無料相談や費用立替の利用可否は収入・資産の基準で判断されるため、事前にご確認ください。自治体が実施する家計相談や生活困窮者向け支援の内容は、お住まいの自治体で異なります。

よくある質問

Q1. 最後に返済した日から5年が過ぎれば、借金は消えるのですか。

自動的には消えません。民法第145条により、債務者側が援用しなければ裁判所は時効による判断をできないとされています。また起算点は「最後に返済した日」そのものではなく、その後に到来した返済期日や期限の利益喪失日になるのが基本です。間に一部入金や支払いの約束があれば、民法第152条により更新されています。

Q2. 督促の電話に出てしまいました。時効は振り出しに戻りますか。

電話に出たこと自体では更新されません。問題になるのは、会話の内容が権利の承認と評価されるかどうかです。「払えません」と答えただけなら承認にあたりませんが、支払う時期や金額に言及した場合は承認と評価される余地があります。評価が分かれる場面が多いため、具体的な会話内容にもとづく判断は弁護士にご確認ください。

Q3. 2020年の民法改正で、過去の借金の時効期間も5年に変わったのですか。

変わりません。改正法(平成29年法律第44号)の経過措置により、施行日である2020年4月1日より前に生じた債権の消滅時効の期間については、なお従前の例によるものとされています。個人間の貸し借りのように改正前が10年だったものは、施行日前に生じていれば10年のまま扱われます。

Q4. 裁判を起こされていたかどうか、確認する方法はありますか。

手元に残っている郵便物の確認が出発点になります。転居が多かった場合など、書類が届いていた可能性を自分で確認しきれないことがあります。債権者に法的手続きの経過を照会する方法もありますが、問い合わせ方によっては債務を認める発言につながる恐れがあります。確認の手順は、依頼を検討している弁護士にご相談ください。

Q5. 時効の援用は自分でできますか。

法律上、援用の意思表示に資格は不要です。内容証明郵便で通知する方法が一般的で、実費は郵便料金と信用情報の開示手数料にとどまります。ただし、起算点の判断、判決の有無の調査、更新事由の確認といった事前の見極めが結果を左右します。判断を誤って通知を送ると債権者に現住所が伝わり、請求が再開する可能性があります。

Q6. 保証人になっている場合、主債務者が援用しなければ何もできないのですか。

民法第145条は、消滅時効を援用できる当事者に保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含むと定めており、保証人が自ら援用することは条文上認められています。主債務者の行為が時効の進行にどう影響するかは事案によって異なるため、個別の判断は弁護士にご確認ください。

Q7. 税金や国民健康保険料にも時効の援用は使えますか。

使いません。国税通則法第72条第2項と地方税法第18条第2項は、徴収権の時効について援用を要せず、その利益を放棄することもできないと定めています。期間が経過すれば援用なしに消滅する仕組みです。もっとも、これらには滞納処分という回収手段があり、放置して期間の経過を待つ対応は想定されていません。国民健康保険の保険料は国民健康保険法第110条第1項により2年です。減免や分納の取り扱いはお住まいの自治体で異なりますので、窓口にご相談ください。

まとめ

  • 2020年4月1日以降に生じた債権は、民法第166条第1項により「権利を行使することができることを知った時から5年」または「権利を行使することができる時から10年」の早い方です。返済期日が定まっている貸付けでは5年で判断されます
  • 施行日前に生じた債権の期間は、改正法の経過措置により従前の例によります
  • 起算点は「最後に返済した日」ではなく、その後に到来した返済期日、または期限の利益喪失日です
  • 期間が過ぎても自動的には消えません。民法第145条にもとづく援用が必要です
  • 1円の返済、支払いの約束、残高確認書への署名などは権利の承認(民法第152条)にあたり、期間がゼロから数え直しになります
  • 判決や仮執行宣言付支払督促が確定していれば、民法第169条により10年です。支払督促には受取りから2週間の異議申立期間があります
  • 国税・地方税は援用を要しない仕組みで、国民健康保険の保険料は2年です
  • 条件がそろわない場合は、任意整理・個人再生・自己破産との比較で検討することになります
  • 違法な勧誘に注意し、消費者ホットライン188、法テラス、日本貸金業協会、警察相談専用電話#9110などの公的窓口を活用してください

本記事は一般的な制度の説明です。起算点の判断や更新事由の有無は事案ごとに評価が必要で、個別の結論は資料を確認したうえでの法的判断になります。ご自身の事案について判断が必要な場合は、弁護士にご相談ください。


出典(確認日:2026年10月5日)

記載内容は確認日時点の情報です。制度や運用は変更されることがありますので、手続きの際は各機関の最新の案内をご確認ください。

執筆:サポート24編集部(担当:原田 由子)

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